
「地元学」とは読んで字のごとく、地元に学ぶということですね。ないものねだりをするのではなく、今ここにあるものにもっともっと目を向けようよという考え方。いったん目を向けはじめると色んなものが見えてきます。ものだけでなくいろんな人も見えてきます。するとどうでしょう。いままで当たり前だった風景や時間の流れ方がとっても味わい深いものに変わってくるのです。地元に学ぶ事で地域が輝いて見える。そして地域での暮らしがずっとずっと楽しくなる、元気になる、豊かになるのです。
ここでみなさんの頭の中にはたぶん、?マークが浮かぶでしょう。なんで地元に目を向けるといい事が起きるのだろう。そういう疑問が浮かぶはず。この「なんで?」はとても大切。なんじょうの地元学になくてはならないものの一つです。だから大切にしましょうね。
さて、日本が鎖国をやめてから現在までの長い間、良いものは外にあるものだ、という考え方が当たり前になっていましたよね。海の外からやって来るもの、シマの外からは来るものはとにかく珍しい。珍しいものを見ると気持ちがワクワクする。そして欲しくなる。これはごく自然な心の動き。人間は好奇心のかたまりなので仕方がないのです。
だけど、最近では外から来るものに必ずしもワクワクしなくなったように思えませんか?インターネットが普及して世界の出来事をどこにいても見れるようになったせいなのか、世界中の流通網が整備され、たいていの物が世界の隅々まであっという間に広まるようになたからか、以前ほどの珍しさが薄れてきたのかもしれません。
また、バブル時代の前あたりからまちづくりとかむらおこしという言葉が盛んに使われるようになりました。そして、出てきたのが全国区レベルの立派な先生や有名なデザイナーの影響を受けた地域振興のプロのような方々です。 プロにはそれぞれの仕事の仕方というものがありますから、 いくつかの地域からお仕事の依頼を受けると、どうしても似たような地域振興がいくつかの地域で同時に進められることになってしまいます。そして、地域振興の世界にも業界的なものがあるようです。成功事例が一つあるとそれは一つの流行のように広まってそれをお手本に地域振興が進められるのです。
その結果を想像するのはたぶん難しくはないでしょう。
やっと答えが見えてきましたね。慣れ親しんだ地元に目を向けるといい事が起きるのは、地元にはそこにしかないワクワクの素がたくさんあるからです。
ワクワクの素は一つずつ違います。人間誰一人として同じでないのと同じように、地域には地域それぞれの色とか匂いとか音があるのです。ワクワクの素をみんなで一つずつ探し出してみましょう。そしてナデナデしたり磨いてみたりすると、いままで気付かなかった輝きを放ちはじめるでしょう。さあみんなで一緒に探しましょう。
世界で初めて地元学という言葉を使いはじめたのは熊本県の水俣市役所に勤務していた吉本哲郎さん。水俣病問題で苦労を味わってきた水俣市はみんなの力で活力を再び取り戻していきました。その途中で持ち寄られた知恵や工夫が重なりあってできた手づくりの「学問」が地元学なのです。
参考書籍:地元学をはじめよう (岩波ジュニア新書)